僕がどうしてもマウンドに上がりたい理由
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記〈17〉
ひとつの声でチームが変わる。前期優勝を果たすなかで見つけた野球の面白さ
◆中21日での登板……
5月8日。ワンアウトも取ることができず交代した僕に、次の登板の機会がめぐってくるのは21日後、5月29日のことだった。
この間は、本当にきつかった。チームに貢献できる選手ではないという現実を突き付けられ、そしてたくさんの人に自分のわがままをとおしてこの愛媛にいることに後悔すら覚えた。
「相方に迷惑をかけてここにきたのに……」
「事務所に無理を言って挑戦させてもらったのに…」
野球をやらせてほしい、とお願いして四国に来たのに、僕は野球をしていない。迷惑を掛けた人たちに顔向けができない、そんな感情が込み上げてきて、この挑戦が正解だったのかどうか分からなくなった。
実際、車で一緒になったチームメイトに「何点差あったら投げさせてもらえるかなあ」と愚痴ってしまったこともあった。「投げる、投げない」は采配であり、首脳陣の判断であることは重々承知のうえだったけれど、とにかく投げたかった。
チームは僕のことをいろいろと考えてくれていた。たとえばピンチを迎えたらすぐ交代になることも、勝負に徹していることはもちろん、逆転されてしまえば僕にもっと大きなショックを与えてしまうだろうと考えてくれていた。
けれど、ピッチャーとして「マウンドに立ちたい」という思いは、ほかになにも勝るものはないくらい、強いものだった。それをはっきりと意識した日々だった。
こんなことを書くと、人によっては「実力がないのだから仕方ないだろう」という人もいるんじゃないかと思う。それはそのとおりだ。でも、それを自覚していればいるほど、マウンドに上がりたかった。
「少しでもマウンド経験を積みたい」
「ピッチャーとして成長したい」
チームに貢献できるピッチャーでいたい。マウンドに立ち続けられる存在でありたい。それは抑えようのない感情だった。